人見知りはもう似合わない
今月から始まったある講座の、昨日がその二回目だった。
一緒に勉強する3人は私よりも年配の女性たちで、顔は見たことがあるけれど話したことはないという間柄。一番年上と思われるのが、シュッと背の高いヤマダさん。もうひとりは山の手の高学歴奥様という感じのサトウさま。もうひとりはとても姿勢の良いスズキさんで、一番年が近そうだ。
前回の講座が終わって帰るとき、私はお手洗いに寄った。元よりひとりでのんびり帰るつもりだったので、靴もゆっくり履いて外に出ると、スズキさんとサトウさまが通りの向こうに立っておられる。(ヤマダさんは用があって講座の途中で帰られていた)
わ、まさか、私が居ないことに気づいて待っていてくださった? と、うろたえながら赤信号を見上げてもたもたしていると、交差点をこっちからこう渡ってこう来なさいと、手振りで呼んでくださる。
ひとこと別れを告げてからトイレに行けばこんなことにならなかったのにと申し訳なく思う反面、ちょっとこういうの面倒くさいな……とも思いながら合流。その日の感想などを話しながら3人で駅までの10分弱を一緒に歩いた。電車はそれぞれに方向が別だった。
そして二回目の昨日の終了後。まだ先生とお話しがあるらしい山の手のサトウさまを残して、ヤマダさんとスズキさんの3人で出口に向かった。一緒に靴を履き、今日はこのメンバーで帰るんだなと腹をくくりながら外に出る。(お手洗いにも寄りたかったけれど、駅で寄ることにした)。西日が眩しい。背の高いヤマダさんは不思議なマスク(耳にかけて首まで覆うような黒い布)をして、先にスタスタと歩き出した。私とスズキさんは話しながら、ヤマダさんの後ろをなんとなく早足で追うように歩く。けれども、ヤマダさんとの距離はどんどん離れ、大きな通りを渡る頃には横断歩道で私達は信号にひっかかり、一言も言葉を交わさないまま、ヤマダさんには先に行かれてしまった。
「早いですね」「よほど急いでいらっしゃるのね」と、人混みに紛れていくヤマダさんの姿をスズキさんとふたりで見送りながら、ああ、あの背中は私だったかもしれない、と思った。
どちらかといえば、ひとりでさっさと帰りたいのが私だ。あるいは、トイレに寄ってひとりわざと遅れて帰ろうとするのが私だ。そうして、ああ、サクライさんはひとりがいいのねと認定してもらえたらその方が楽……というのがこれまでの常だったのだ。
でもそんな、私のようなヤマダさんの背中を見送りながら、私は隣にいるスズキさんの方に親しみを感じ始めている。前回、スズキさんが待ってくれなければ、たぶん、私の「ひとりで帰る」スタンスは確立されていただろう。でも、先々はこの4人で連携しなければならないこともあるかもしれないので、よく知り合っておくに越したことはないのだ。(距離の取り方はその後で考えればいい)
それとも、年のせいなのかな。「ひとりでいいもん」と思う反面、「知り合い」を増やしたいと素直に思うようになっていることも否めない。顔を合わせたら親しく笑って話せる相手がほしい。来春の娘の就職を前に、寂しさを予感しているのかもしれない。
ただ、やはり人見知り……というか、自分を信用できないところが多々あるから、思わぬ失礼をする機会が増えることは怖いのだなあ……。