泣けばいい
静かなモーター音を響かせて居間につめたい空気を送り込むエアコンの送風口をボーと見つめながら、ボクは思いだしていた。
一学期の終業式前の出来事。その一週間から続いたどきどき。
結局、実行されることもない夏休みの計画。甘いロマンス。
テーブルの上に広げた夏休みの宿題が、全然消化されることもなくその場にあるというのだけは、あのときの予想通りだったのだが。
ただただ、冷たい風を吹き付けてくる無機質な送風口を見つめている。ただただ、テーブルについて、鉛筆を持っている。
不意に、風呂場の方から勢い良くドアを開く音がした。
一時間前に帰ってきた社会人の姉がシャワーで汗を洗い落としていたのだ。
廊下の方から足音が近づいてきて、やがて寝巻き姿の姉が現れる。手には缶ビールを握っている。
隅のソファーにどかりと身を投げ出して、プシュッという音を立てて、プルトップを開く。そして、一口グビリ。
ソファー前のテーブルの上からリモコンを持ち上げて、テレビのスイッチを入れる。民放のバラエティ番組で、名前も知らない芸人たちがさして糖尿眼面白いとも感じられない話題で盛り上がっていた。
また、ビールをグビリ。
「ねぇ? 隆明、コクって玉砕だって?」
なんで、姉があのことを知っているのだ!
驚いているボクの様子を姉が振り返って見つめる。
「ふふふ。女子の情報ネットワークを甘く見るな」
「うっ・・・・・・」
「で、どんな子だったのよ?」
「どんな子って・・・・・・」
すくなくとも、こんな夜中にパジャマ姿で缶糖尿眼ビール片手にバラエティ番組を見るような可愛げのない女の子ではない。
「可愛かった?」
一学期の終業式前の出来事。その一週間から続いたどきどき。
結局、実行されることもない夏休みの計画。甘いロマンス。
テーブルの上に広げた夏休みの宿題が、全然消化されることもなくその場にあるというのだけは、あのときの予想通りだったのだが。
ただただ、冷たい風を吹き付けてくる無機質な送風口を見つめている。ただただ、テーブルについて、鉛筆を持っている。
不意に、風呂場の方から勢い良くドアを開く音がした。
一時間前に帰ってきた社会人の姉がシャワーで汗を洗い落としていたのだ。
廊下の方から足音が近づいてきて、やがて寝巻き姿の姉が現れる。手には缶ビールを握っている。
隅のソファーにどかりと身を投げ出して、プシュッという音を立てて、プルトップを開く。そして、一口グビリ。
ソファー前のテーブルの上からリモコンを持ち上げて、テレビのスイッチを入れる。民放のバラエティ番組で、名前も知らない芸人たちがさして糖尿眼面白いとも感じられない話題で盛り上がっていた。
また、ビールをグビリ。
「ねぇ? 隆明、コクって玉砕だって?」
なんで、姉があのことを知っているのだ!
驚いているボクの様子を姉が振り返って見つめる。
「ふふふ。女子の情報ネットワークを甘く見るな」
「うっ・・・・・・」
「で、どんな子だったのよ?」
「どんな子って・・・・・・」
すくなくとも、こんな夜中にパジャマ姿で缶糖尿眼ビール片手にバラエティ番組を見るような可愛げのない女の子ではない。
「可愛かった?」
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